スイセン



スイセンにちなんで,むかし院内誌に文章を寄せたことがあります.
ふと思い出したのでここに再掲します.

「12の花の12の話」
2月 スイセン 〈Narcissus/Narcissus tazetta

 スイセンの学名ナルキッソスは,池に映る自らの美貌に恋い焦がれ,果てには溺死してしまった美少年の名前であり,ギリシャ神話に由来する.よく耳にするナルシストという言葉もここから来たものであり,スイセンの花言葉は「うぬぼれ」「自己愛」とある.しかし,スイセンは春の訪れとともに咲くことから「希望」の象徴ともされている.
 2月は一年のなかでも特別な月である.別れと出会いという変化の季節がすぐそこまで近づいていることを薄々感じながら,まだ実感は持てないというモラトリアムの時間.日数が短いせいもあり,それは気づけばいつの間にか過ぎてしまうのだが,その時間の大切さは後になってからでないとわからない.新たな地に向かうもの,残るもの,それぞれの2月,かすかな春の兆しを感じさせる柔らかな風や,穏やかな陽射しに何を想うのだろうか.スイセンの花はうつむきながら,清らかな香りを放って咲いている.黄色の副冠は日輪を思わせ,まるで辺りを照らしているかのようだ.希望もまた,まだ見ぬ未来を照らすサーチライトのようなもの.それは,期せずして誰かの道しるべにもなるだろう.それぞれの場所で,惑うものを導く存在であってほしい.

                                                                                                   Posted by 園芸療法士 剱持 

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