2017.06.26 01:00クチナシの花クチナシの花が咲いています.梅雨の湿った空気に溶け込んだ香りは甘くねっとりとしていて,強い印象をもたらします.7年ほど前,院内誌にクチナシをモチーフにした文章を寄せたことがありますので,ここに再掲します.時々このシリーズを載せていますが,フィクションとノンフィクションのあわいとしてお読みください.12の花の12の話6月 クチナシ〈Common gardenia / Gardenia Jasminoides 〉 6月,雨上がりの庭には湿気と花の芳香をたっぷりと含んだ空気が満ちていて,そこで過ごすうちにいつか見た夢の中にいるような心持ちになる. そこかしこに咲き誇る花々に祝福されるかのように,芝生のじゅうたんを花嫁が歩く.純白のドレスに添えられているのは,...
2017.05.24 23:30クローバー5月になると,シロツメクサがあちらこちらで咲き出します.最近はガーデン内に咲くことはほとんどありませんが,丈夫なので一時期とても増えてしまい困ったことがあります.花の匂いはほの甘く,先日スイートピーの匂いを嗅いだ時にシロツメクサに似ているなとふと感じましたが,両方ともマメ科なので共通した匂いの成分があるのかもしれません.そういえば,かつて院内報にシロツメクサをテーマとした文章を書いたことがあったのをふと思い出しましたので,当時文章といっしょに掲載した花のイラストも併せてここに再掲します.12の花の12の話5月 シロツメクサ〈White clover / Trifolium repens L.〉 もう二十年以上も前,草の青い匂いが強まる季節に僕らは野原を...
2017.04.11 23:00桜写真の桜は園芸療法ガーデンではなく,農耕場というところに生えている木です.生えていると言ったのは,文字通り,「生えてきた」からなのです.かつて,冬場の農耕作業で暖を取るために薪を畑に積んで置いていたのですが,置いてあった桜の薪から芽が出てきて,それがいつしかこんなに大きな桜の木にまで育ったのです.嘘のような本当の話です.さて,以前院内誌に桜にちなんだ文章を寄せたことがあったのですが,ふと思い出したので転載します.「12の花の12の話」4月 サクラ 〈cherry blossoms/Prunus spp.〉 もしも桜の花の咲かない春がきたらどうだろう.あまり想像がつかないが,おそらく,大切なものをまったく見当のつかないどこかに置き忘れてきたような,落ち着...
2017.03.31 03:30スイセンスイセンにちなんで,むかし院内誌に文章を寄せたことがあります.ふと思い出したのでここに再掲します.「12の花の12の話」2月 スイセン 〈Narcissus/Narcissus tazetta〉 スイセンの学名ナルキッソスは,池に映る自らの美貌に恋い焦がれ,果てには溺死してしまった美少年の名前であり,ギリシャ神話に由来する.よく耳にするナルシストという言葉もここから来たものであり,スイセンの花言葉は「うぬぼれ」「自己愛」とある.しかし,スイセンは春の訪れとともに咲くことから「希望」の象徴ともされている. 2月は一年のなかでも特別な月である.別れと出会いという変化の季節がすぐそこまで近づいていることを薄々感じながら,まだ実感は持てないというモラトリアムの...