先月の末頃から,ガーデンにはクチナシの花が咲いて,ほの甘い香りを周囲に漂わせています.
この花を摘んで,高齢の方の集まるプログラムに持っていくと,皆さんそれぞれに匂いを嗅いで,うっとりとされています.
また,荒井由美の「やさしさに包まれたなら」の一節にもありますが,雨上がりに,土の匂いに混じったこの甘い香りを感じると,なんともいえない恍惚とした気分になります.
そして,どうしてか「クチナシ」の名前を聞くと百人一首のこの歌を思い出します.
恨みわび ほさぬ袖だにあるものを 恋にくちなむ 名こそ惜しけれ 相模(小倉百人一首 65番)
下の句の響きが「クチナシ」から連想されることでこの歌を思い出してしまうのだと思うのですが,同じようにこの歌を思い出す方もおられるでしょうか.私はクチナシの花を見るたびにこの歌が頭の中をぐるぐるします.
しかしながら,千年以上前の切ない恋の歌が現在も腑に落ちるところがあるというのは,さして人間の本質は変わっていないんだよ,ということを教えてくれているような気もします.
この歌の作者である相模というひとについては詳しいことはわかっていないそうですが,そういえば昨年公開された高畑勲監督の「かぐや姫の物語」に,相模というキャラクターが出てきました.
この映画は映画館で観てきましたが,画面も衝撃的でしたが,音楽も含めてとても美しいなあと思い,少し高揚した気分で映画館を出てきた覚えがあります.
クチナシの花から話が飛びましたが,クチナシの花をテーマとした歌などの表現も多く,美しい花はひとの表現欲を誘うような気がします.
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